第2章 帳簿と試算表 基本 流れを理解

帳簿と試算表

仕訳しただけでは「今いくら?」が分かりません。仕訳を科目ごとに集めなおし、試算表で1年を集計するまでの流れを、ひとつずつ追いかけましょう。

🎯 このレッスンのゴール

  1. 取引 → 仕訳帳 → 総勘定元帳 → 試算表という帳簿の流れを言える
  2. 「転記」とは何かを説明でき、T字勘定(Tフォーム)が読める
  3. 主要簿と補助簿のちがいが分かる
  4. 試算表の3種類と、貸借一致でチェックするしくみが分かる

前のレッスンで、たくさん仕訳を切りましたね。でも、仕訳だけを日付順にながめても「現金は今いくら残ってる?」はパッと分かりません。そこで、切った仕訳を科目ごとに集めなおすのがこのレッスンのテーマです。地味だけど、簿記の背骨になる部分ですよ。

1. まずは帳簿の「流れ」を地図で見る

簿記では、ひとつの取引が次のように形を変えながら最後の表まで運ばれていきます。この流れの全体像を先に頭に入れてしまうのが、いちばんの近道です。

帳簿の流れ(これがすべての土台)

取引仕訳帳(仕訳を日付順に記録)→ 総勘定元帳(科目ごとに転記)→ 試算表(集計してチェック)

たとえ話:3つの書き方で同じ出来事を残す

仕訳帳は、出来事をおきた順に書く「日記」。総勘定元帳は、それを「食費」「交通費」のようにテーマ別に書き写した「項目別ノート」。試算表は、その項目別ノートの数字を全部あつめた「集計表」です。同じ出来事を、目的に合わせて3通りの形で残しているだけなんですね。

2. 仕訳帳 ── すべての出発点

仕訳帳は、その会社で起きたすべての取引を日付順に仕訳の形で書きつける帳簿です。簿記のいちばん最初の入り口で、ここに書かれた仕訳がこのあとのすべての帳簿のもとになります。

「いつ・どんな取引があって・どの科目をいくら借方/貸方に書いたか」を、もれなく時間の流れにそって記録する。それが仕訳帳の役割です。

仕訳帳に書かれた仕訳のイメージ(例:商品¥30,000を現金で売り上げた)
借方貸方
現 金30,000 売 上30,000
この1本の仕訳を、次は「現金」と「売上」のそれぞれのページへ書き写していきます。

3. 総勘定元帳と「転記」

仕訳帳に書いた仕訳を、勘定科目ごとのページ(勘定口座)に書き写すことを転記(てんき)といいます。書き写す先の帳簿が総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)です。元帳には「現金」「売上」「買掛金」…と科目ごとにページがあり、そこへ仕訳の金額を移していきます。

転記のルールはたったこれだけ

仕訳で借方に書いた科目は、元帳でもその科目の借方(左)へ。
仕訳で貸方に書いた科目は、元帳でもその科目の貸方(右)へ。
左右を入れかえてはいけません。「借方は借方へ、貸方は貸方へ」とおぼえましょう。

T字勘定(Tフォーム)で見る

勘定のページは、まん中に縦線を引いて左を借方・右を貸方に分けた形をしています。アルファベットの「T」に似ているのでT字勘定(Tフォーム)と呼びます。練習やメモではこのT字をよく使います。

例として「現金」勘定に、いくつかの取引を転記して残高を出してみましょう。

現 金(借方残高)
借方(入ってきた)貸方(出ていった)
前月繰越 100,000仕入    40,000
売上    30,000水道光熱費 5,000
借方合計 130,000貸方合計  45,000
借方合計 130,000 − 貸方合計 45,000 = 残高 85,000(借方に残る)

現金や売掛金などの資産は、増える側(借方)の合計のほうが大きく、ふつう借方に残高が残ります。逆に負債・純資産・収益は貸方に残高が残ります。

たとえ話:おサイフの出入り

T字勘定の左は「お金が入ってきた記録」、右は「出ていった記録」。左の合計から右の合計を引けば、いま手もとにいくら残っているか(残高)が分かる、という財布の家計簿そのものです。

- スポンサーリンク -
広告スペース

4. 主要簿と補助簿

帳簿は大きく2つに分けられます。必ず作る主要簿と、必要に応じて作る明細用の補助簿です。

区分帳簿役割(ひとことで)
主要簿
必ず作る
仕訳帳すべての取引を日付順に仕訳で記録する
総勘定元帳仕訳を科目ごとに転記してまとめる
補助簿
必要に応じて作る明細帳
現金出納帳現金の入出金の明細を記録する
当座預金出納帳当座預金の入出金の明細を記録する
小口現金出納帳少額の経費に使う小口現金の明細を記録する
仕入帳仕入取引の明細(品名・数量・金額など)を記録する
売上帳売上取引の明細を記録する
商品有高帳商品の受け入れ・払い出しと在庫の数量・金額を記録する
売掛金元帳
(得意先元帳)
得意先(お客)ごとの売掛金の増減を管理する
買掛金元帳
(仕入先元帳)
仕入先ごとの買掛金の増減を管理する
受取手形記入帳受け取った手形の明細を記録する
支払手形記入帳振り出した(支払う)手形の明細を記録する
固定資産台帳建物・備品などの固定資産を1つずつ管理する

補助簿は「主要簿だけでは足りないくわしい内訳を、必要なものだけ別に記録するノート」とイメージすればOK。3級ではまず「主要簿=仕訳帳・総勘定元帳」だとしっかり覚え、補助簿はどんなものがあるかを知っておけば十分です。

商品有高帳のさわり

補助簿のうち商品有高帳では、商品を売ったときに「いくらで仕入れた分を払い出したか(払出単価)」を決める方法として、先入先出法(先に仕入れた分から先に売ったとみなす)や移動平均法(仕入れるたびに平均単価を計算しなおす)があります。

ここでは深入りしません

商品有高帳の細かい計算は、別レッスンであらためて練習します。今は「払出単価の決め方に何種類かある」という名前だけ知っておけば大丈夫です。

5. 試算表(しさんひょう)とは

試算表は、総勘定元帳にある各勘定の金額を一覧に集計した表です。元帳のページがバラバラにあると全体が見えないので、1枚にまとめて確認します。

試算表の2つの目的

① 仕訳帳から元帳への転記が正しくできているかをチェックする(借方合計=貸方合計になるか)。
② 次のステップである決算の準備をする(試算表をもとに財務諸表へ進む)。

6. 試算表の3種類

試算表には、何を集めるかによって3つの種類があります。中身がちがうだけで、目的は同じです。

種類何を集めた表?ポイント
合計試算表各勘定の借方合計貸方合計を集めた表取引の総額が分かる
残高試算表各勘定の残高だけを集めた表いまの状態(残高)がスッキリ分かる
合計残高試算表合計と残高を1つにまとめた表左右に「合計」欄と「残高」欄をならべる

合計残高試算表は、いちばん外側に借方合計・借方残高、内側に勘定科目、反対側に貸方残高・貸方合計…というように、合計試算表と残高試算表を合体させた形です。

7. 貸借平均の原理ふたたび

仕訳は、必ず借方の合計=貸方の合計になるよう切られていました(貸借平均の原理)。その仕訳を正しく転記しているなら、集計した試算表でも当然借方合計=貸方合計になります。

つまり、試算表の左右が一致しなければ、転記や集計のどこかにミスがあるというサインです。これが「試算表で検算する」というしくみの正体です。

注意:試算表で見つけられない誤りもある

左右が一致していても「100%正しい」とは言い切れません。次のような誤りは貸借のバランスがくずれないため、試算表では発見できません。

・取引をまるごと記帳しわすれた(仕訳そのものがない)
・同じ仕訳を二重に記帳した
・借方と貸方を両方とも同じ金額だけ間違えた(例:両方を1,000円多く書いた)
科目を取りちがえた(金額は合っているが現金を当座預金にしてしまった等)

8. 数値例で残高試算表を作ってみる

かんたんな例で、残高試算表の左右がちゃんと一致するのを確かめましょう。ある会社の各勘定の残高が次のようになったとします。

借方残高勘定科目貸方残高
120,000現 金
80,000売掛金
50,000備 品
買掛金40,000
借入金60,000
資本金100,000
売 上70,000
20,000仕 入
借方合計 270,000合 計貸方合計 270,000

借方(資産+費用)の合計 270,000 と、貸方(負債+純資産+収益)の合計 270,000 がぴったり一致しました。一致したので、転記と集計はおおむね正しくできていると判断できます。

左右が合うと気持ちいいですよね。資産と費用が左、負債・純資産・収益が右にくる──このならびは仕訳のホームポジションそのもの。試算表は「仕訳のルールを1年分まとめて確かめる場所」だと思ってください。

✅ 確認テスト(○×6問)

Q1帳簿の流れは「取引 → 仕訳帳 → 総勘定元帳 → 試算表」の順である。

○。取引を仕訳帳に記録し、それを総勘定元帳へ転記し、最後に試算表で集計します。これが帳簿のいちばんの基本の流れです。

Q2仕訳を勘定科目ごとのページに書き写すことを「仕訳」という。

×。書き写すことは「転記」といいます。「仕訳」は取引を借方・貸方に分けて記録すること自体を指します。

Q3仕訳帳と当座預金出納帳は、どちらも主要簿である。

×。主要簿は仕訳帳と総勘定元帳の2つだけです。当座預金出納帳は補助簿(補助記入帳)です。

Q4試算表のおもな目的のひとつは、転記が正しいか(借方合計=貸方合計か)を確かめることである。

○。仕訳が貸借一致しているので、正しく転記すれば試算表でも借方合計=貸方合計になります。合わなければミスのサインです。

Q5各勘定の残高だけを集めた試算表を「合計試算表」という。

×。残高だけを集めたのは「残高試算表」です。借方合計・貸方合計を集めたのが「合計試算表」です。

Q6取引をまるごと記帳しわすれても、試算表の借方合計と貸方合計は一致したままになることがある。

○。記帳もれは借方・貸方の両方がそっくり抜けるため、左右のバランスはくずれません。だから試算表では発見できない誤りの代表例です。

📖 一問一答(7問)

すべての取引を日付順に仕訳で記録する帳簿は?
仕訳帳。簿記の出発点となる主要簿です。
仕訳を勘定科目ごとに書き写す(転記する)先の帳簿は?
総勘定元帳。科目ごとのページ(勘定口座)に金額を集めます。
仕訳を科目ごとのページに書き写す作業を何という?
転記(てんき)。借方は借方へ、貸方は貸方へ、左右を変えずに書き写します。
必ず作る2つの主要簿は?
仕訳帳と総勘定元帳。それ以外(現金出納帳・仕入帳など)は補助簿です。
得意先ごとの売掛金を管理する補助簿の名前は?
売掛金元帳(得意先元帳)。仕入先ごとの買掛金は買掛金元帳(仕入先元帳)で管理します。
合計と残高を1枚にまとめた試算表を何という?
合計残高試算表。左右に合計欄と残高欄をならべた形です。
試算表の左右が一致しても見つけられない誤りを1つ挙げると?
取引のまるごと記帳もれ(ほかに二重記帳、貸借を同額ずつ間違えた誤り、科目の取りちがえなど)。これらは貸借のバランスをくずさないため発見できません。

📝 まとめ

このレッスンの要点

・流れは 取引 → 仕訳帳 → 総勘定元帳(転記)→ 試算表
転記は「借方は借方へ、貸方は貸方へ」。T字勘定は左=借方・右=貸方。
・主要簿は仕訳帳・総勘定元帳の2つ。補助簿は必要に応じて作る明細帳。
・試算表は3種類(合計/残高/合計残高)。目的は転記チェックと決算準備。
・正しく転記すれば借方合計=貸方合計。ただし記帳もれ・二重記帳などは試算表では見つけられない。