第1章 仕訳の基礎 実践 頻出

よく出る取引と仕訳

試験にくり返し出てくる取引を、仕訳ボックスで一気に整理。「このパターンならこの仕訳」を体にしみこませましょう。

🎯 このレッスンのゴール

  1. 三分法(仕入・売上・繰越商品)で商品売買の仕訳ができる
  2. 諸掛・返品・現金預金・当座借越のあつかいがわかる
  3. 手形・電子記録債権債務・クレジット売掛金の仕訳ができる
  4. 貸付借入と利息、未収未払・前払前受、給料と預り金が処理できる
  5. 固定資産の取得原価と、税金(租税公課・消費税)のさわりがわかる

仕訳のルールはもう学んだね。あとは「よく出る取引」を知っているかどうか。試験は同じパターンのくり返しなんだ。

このページは仕訳の見本帳(カタログ)。1つずつ、どのグループがどう動いたかをいっしょに確認していこう。むずかしく考えず、まずは型をまねるところから!

各グループの色を、最初に思い出しておきましょう。仕訳を見るとき、頭の中でこの色わけができると一気にラクになります。

資産 負債 純資産 収益 費用

増えた側=そのグループの「定位置」に書く

資産・費用は借方(左)が定位置。負債・純資産・収益は貸方(右)が定位置。増えたら定位置へ、減ったら反対側へ。これだけで多くの仕訳が解けます。

1. 商品売買(三分法)

3級では商品売買を三分法で記録します。商品を費用仕入、売ったら収益売上、決算で残った在庫を資産繰越商品であつかう方法です。

例:商品300を掛けで仕入れた
借方貸方
仕 入300買掛金300
費用(仕入)の発生→借方。代金は後払いなので負債(買掛金)の増加→貸方。
例:商品300を現金で仕入れた
借方貸方
仕 入300現 金300
費用(仕入)の発生→借方。資産(現金)の減少→貸方。
例:商品を500で掛け売りした
借方貸方
売掛金500売 上500
あとで受け取る権利=資産(売掛金)の増加→借方。収益(売上)の発生→貸方。
例:商品を500で現金売りした
借方貸方
現 金500売 上500
資産(現金)の増加→借方。収益(売上)の発生→貸方。
ひっかけ注意:「商品」という科目は使わない

三分法では、仕入れたときも「商品」ではなく仕入、売ったときも売上と書きます。「商品」という勘定が登場するのは、決算のときの繰越商品だけ。ここを混同しないようにしましょう。

2. 仕入諸掛・売上諸掛

商品の売り買いには、運賃や送料などの諸掛(しょがかり)がかかることがあります。だれが負担するかで処理が変わります。

例:商品300を仕入れ、引取運賃20を現金で払った(当方負担)
借方貸方
仕 入320買掛金300
現 金20
仕入時の引取運賃は商品の原価に含めるので、仕入を320にする(300+20)。費用(仕入)の発生→借方、負債と資産の動き→貸方。
例:商品を500で売り、発送費30を現金で払った(当方負担)
借方貸方
売掛金500売 上500
発送費30現 金30
売上時の発送費(当方負担)は売上に含めず、費用(発送費)として別に計上→借方。仕入諸掛とあつかいが違う点に注意。

3. 返品(戻し・戻り)

品違いや不良で商品を返すのが返品。仕入れた側が返すのが仕入戻し、売った側に返ってくるのが売上戻りです。最初の仕訳を逆にするイメージで、返品ぶんを取り消します。

例:掛けで仕入れた商品のうち50を返品した(仕入戻し)
借方貸方
買掛金50仕 入50
仕入のとき「仕入/買掛金」だったので、その逆。負債(買掛金)の減少→借方、費用(仕入)の取り消し→貸方。
例:掛け売りした商品のうち80が返品されてきた(売上戻り)
借方貸方
売 上80売掛金80
売上のとき「売掛金/売上」だったので、その逆。収益(売上)の取り消し→借方、資産(売掛金)の減少→貸方。
- スポンサーリンク -
広告スペース

4. 現金・預金

会社のお金は、現金のほか普通預金・当座預金で管理します。預ければ預金が増えて現金が減り、引き出せばその逆。どれも資産どうしの入れ替えです。

例:現金200を普通預金に預け入れた
借方貸方
普通預金200現 金200
資産(普通預金)の増加→借方、資産(現金)の減少→貸方。資産どうしの振り替え。
例:買掛金100を当座預金から支払った
借方貸方
買掛金100当座預金100
負債(買掛金)の減少→借方、資産(当座預金)の減少→貸方。
当座借越(とうざかりこし)とは?

当座預金の残高をこえて引き出すと、銀行が一時的に立てかえてくれます。これが当座借越。いわば「銀行からの一時的な借り」なので、決算で借入金(または当座借越)という負債に振り替えます。

例:決算で当座預金が貸方残高40(マイナス)になっていた
借方貸方
当座預金40当座借越40
マイナスの当座預金を0に戻し(借方)、同額を負債の当座借越(または借入金)へ→貸方。借越は「借りている」状態なので負債。
小口現金(インプレストシステム)

こまかい経費用に、係へ前もって一定額を渡しておくしくみです。渡すときと、使った報告を受けたときで仕訳が分かれます。

例:小口現金50を当座預金から係に前渡しした
借方貸方
小口現金50当座預金50
資産(小口現金)の増加→借方、資産(当座預金)の減少→貸方。
例:小口現金から旅費20・消耗品費10を使ったと報告を受けた
借方貸方
旅費交通費20小口現金30
消耗品費10
使った分だけ費用の発生→借方、資産(小口現金)の減少→貸方。後日この30を補給すれば、また残高50に戻ります。

5. 手形・電子記録債権債務

約束手形は「いついくら払う」と約束した紙。振り出した(発行した)側は負債支払手形、受け取った側は資産受取手形で記録します。

例:商品300を仕入れ、約束手形を振り出した
借方貸方
仕 入300支払手形300
費用(仕入)の発生→借方。あとで支払う約束=負債(支払手形)の増加→貸方。
例:商品500を売り、約束手形を受け取った
借方貸方
受取手形500売 上500
あとで受け取る権利=資産(受取手形)の増加→借方。収益(売上)の発生→貸方。
例:振り出した約束手形300の支払期日がきて、当座預金から決済した
借方貸方
支払手形300当座預金300
約束をはたしたので負債(支払手形)の減少→借方、資産(当座預金)の減少→貸方。

手形と同じ役割を、紙ではなくデータで行うのが電子記録債権・電子記録債務です。売掛金が電子記録債権に、買掛金が電子記録債務に変わると考えるとわかりやすいです。

例:売掛金500について、取引先が電子記録債権の発生記録を行った
借方貸方
電子記録債権500売掛金500
資産(電子記録債権)の増加→借方、資産(売掛金)の減少→貸方。受け取る権利の形が変わっただけ。
例:買掛金300について、電子記録債務の発生記録を行った
借方貸方
買掛金300電子記録債務300
負債(買掛金)の減少→借方、負債(電子記録債務)の増加→貸方。払う義務の形が変わっただけ。

6. クレジット売掛金

お客さんがクレジットカードで払うと、代金はカード会社からあとで入ってきます。この債権は通常の売掛金と区別してクレジット売掛金とします。カード会社へ払う支払手数料を、ふつうは販売時に計上します。

例:商品1,000をクレジット払いで売った。手数料は売上の2%(=20)
借方貸方
クレジット売掛金980売 上1,000
支払手数料20
手数料20を差し引いた980が入金される権利=資産(クレジット売掛金)→借方。手数料は費用→借方。収益(売上)は値引き前の1,000で計上→貸方。

7. 貸付・借入と利息

お金を貸すと資産貸付金、借りると負債借入金。利息は、受け取れば収益受取利息、払えば費用支払利息です。

例:取引先に現金1,000を貸し付けた
借方貸方
貸付金1,000現 金1,000
あとで返してもらう権利=資産(貸付金)の増加→借方、資産(現金)の減少→貸方。
例:銀行から現金1,000を借り入れた
借方貸方
現 金1,000借入金1,000
資産(現金)の増加→借方、返す義務=負債(借入金)の増加→貸方。
例:貸付金の利息50を現金で受け取った
借方貸方
現 金50受取利息50
資産(現金)の増加→借方、収益(受取利息)の発生→貸方。
例:借入金の利息30を現金で支払った
借方貸方
支払利息30現 金30
費用(支払利息)の発生→借方、資産(現金)の減少→貸方。

8. 未収入金・未払金/前払金・前受金

ひっかけ注意:「商品」かどうかで科目が変わる

あとで受け取る・払うお金でも、商品の売り買いなら売掛金・買掛金。商品以外(備品や土地など)の取引なら未収入金・未払金を使います。ここはよく問われます。

例:不要になった備品(帳簿価額200)を200で売り、代金は後日受け取り
借方貸方
未収入金200備 品200
商品以外なのであとで受け取る権利は資産(未収入金)→借方。資産(備品)の減少→貸方。商品ではないので「売掛金」「売上」は使わない。
例:備品150を買い、代金は後日支払い
借方貸方
備 品150未払金150
資産(備品)の増加→借方。商品以外の後払い=負債(未払金)の増加→貸方。「買掛金」ではない点に注意。

商品の代金を、引き渡し前に手付金としてやりとりすることもあります。払う側は前払金(資産)、受け取る側は前受金(負債)です。

例:商品の注文時に、手付金50を現金で払った
借方貸方
前払金50現 金50
先に払った分は「あとで商品を受け取れる権利」=資産(前払金)の増加→借方。資産(現金)の減少→貸方。
例:商品の注文を受け、手付金50を現金で受け取った
借方貸方
現 金50前受金50
資産(現金)の増加→借方。先に受け取った分は「あとで商品を渡す義務」=負債(前受金)の増加→貸方。

9. 給料と立替金・預り金

給料は費用。ただし会社は、従業員の源泉所得税社会保険料を給料から天引きして、あとでまとめて納めます。この天引き分は、いったん預り金(負債)として預かります。

例:給料300のうち、源泉所得税30を天引きし、残り270を現金で支給
借方貸方
給 料300所得税預り金30
現 金270
給料は天引き前の総額300で費用計上→借方。預かった税金は負債(預り金)→貸方、実際に渡した現金270の減少→貸方。借方と貸方はどちらも300で一致。
立替金(たてかえきん)

本来は相手が払うお金を、会社が一時的に立てかえたときに使う資産の科目です。あとで返してもらえる権利なので、受取側のイメージ。

例:従業員が負担すべき費用20を、会社が現金で立てかえた
借方貸方
従業員立替金20現 金20
あとで返してもらう権利=資産(立替金)の増加→借方、資産(現金)の減少→貸方。

10. 固定資産の購入

長く使う建物・備品・土地・車両運搬具などが固定資産(資産)です。買うときに本体価格だけでなく付随費用(登記料・運送費・据付費・仲介手数料など)がかかったら、それも取得原価に含めて記録します。

例:建物1,000を購入し、登記料・仲介手数料50とあわせて現金で払った
借方貸方
建 物1,050現 金1,050
本体1,000+付随費用50=1,050を取得原価として資産(建物)に計上→借方。資産(現金)の減少→貸方。付随費用を費用にしないのがポイント。
例:備品300を買い、据付費20を加えた合計を後日払い
借方貸方
備 品320未払金320
本体300+据付費20=320を資産(備品)に計上→借方。商品以外の後払いなので負債(未払金)→貸方。

11. 税金のさわり

会社が払う税金のうち、収入印紙・固定資産税・自動車税などは費用租税公課(そぜいこうか)で処理します。

例:収入印紙10と固定資産税40を現金で納付した
借方貸方
租税公課50現 金50
費用(租税公課)の発生→借方、資産(現金)の減少→貸方。

消費税は税抜方式で処理します。仕入で払った消費税は仮払消費税(資産)、売上で預かった消費税は仮受消費税(負債)。預かった分から払った分を差し引いて、あとで納めます。

例:商品を1,000(税抜)で売り、消費税100とあわせて現金で受け取った
借方貸方
現 金1,100売 上1,000
仮受消費税100
税抜方式では、売上は税抜の1,000で計上→貸方。預かった消費税100は負債(仮受消費税)→貸方。受け取った現金は税込の1,100→借方。
このレッスンの合言葉

仕訳に迷ったら、「どのグループが増えた/減ったか」を1つずつ確認。資産・費用が増えたら借方、負債・純資産・収益が増えたら貸方。あとは反対側を埋めるだけです。

✅ 確認テスト(7問)

○か×かで答えてみましょう。選ぶと正解と解説が出ます。

Q1. 三分法では、商品を仕入れたとき「商品」という勘定で記録する。

答え:×。三分法では仕入れたとき「仕入」(費用)を使います。「商品」を使うのは決算の繰越商品のときだけです。

Q2. 仕入時に当方が負担した引取運賃は、仕入(商品の原価)に含めて処理する。

答え:○。仕入諸掛(引取運賃など)は仕入に含めます。一方、売上時の発送費(当方負担)は売上に含めず「発送費」(費用)で処理します。

Q3. 掛けで仕入れた商品を返品したときの仕訳は「仕入/買掛金」である。

答え:×。返品(仕入戻し)は最初の仕訳の逆なので「買掛金/仕入」です。買掛金(負債)の減少と仕入(費用)の取り消しになります。

Q4. 当座預金の残高をこえて引き出した分(当座借越)は、決算で借入金などの負債に振り替える。

答え:○。当座借越は銀行からの一時的な借りなので、決算で当座借越(または借入金)という負債に振り替えます。

Q5. クレジット払いで商品を売ったとき、カード会社への支払手数料は「支払手数料」(費用)で計上する。

答え:○。売上は値引き前の総額で貸方に計上し、手数料は費用(支払手数料)として借方、入金される額をクレジット売掛金(資産)として借方に計上します。

Q6. 不要になった備品を売り、代金を後日受け取るときは「売掛金」で処理する。

答え:×。商品以外の売却なので「未収入金」(資産)を使います。売掛金は商品の掛け売りのときだけです。

Q7. 建物を買うときの登記料や仲介手数料などの付随費用は、建物の取得原価に含める。

答え:○。固定資産の付随費用は取得原価に含めます。本体価格+付随費用の合計を建物(資産)として計上します。

📝 一問一答(8問)

Q1. 商品を掛けで仕入れたときの仕訳は?
A. (借)仕入 ×× /(貸)買掛金 ××。費用の発生と負債の増加です。
Q2. 商品を現金で売ったときの仕訳は?
A. (借)現金 ×× /(貸)売上 ××。資産の増加と収益の発生です。
Q3. 掛け売りした商品が返品されてきたら?
A. (借)売上 ×× /(貸)売掛金 ××。売上戻りは最初の仕訳の逆になります。
Q4. 約束手形を振り出して商品を仕入れたときの相手科目は?
A. 支払手形(負債)。(借)仕入 ×× /(貸)支払手形 ×× となります。
Q5. 売掛金が電子記録債権の発生記録に変わったときの仕訳は?
A. (借)電子記録債権 ×× /(貸)売掛金 ××。受け取る権利の形が変わっただけです。
Q6. お金を借り入れたときに使う負債の科目は?
A. 借入金。利息を払えば支払利息(費用)、貸付金の利息を受け取れば受取利息(収益)です。
Q7. 商品の注文時に手付金を払った側が使う科目は?
A. 前払金(資産)。受け取った側は前受金(負債)を使います。
Q8. 給料から源泉所得税を天引きしたときの天引き分の科目は?
A. 所得税預り金(預り金・負債)。給料は天引き前の総額で費用計上します。

🔑 まとめ

このレッスンの要点

・商品売買は三分法(仕入=費用、売上=収益、繰越商品=資産)。
・仕入諸掛は仕入に含める/売上時の発送費(当方負担)は発送費で処理。
・返品は最初の仕訳を逆にする(仕入戻し=買掛金/仕入、売上戻り=売上/売掛金)。
・当座をこえた引き出しは当座借越(負債)。手形・電子記録債権債務は受け取る権利/払う義務の形ちがい。
・商品以外の後払い・前払いは未収入金・未払金/前払金・前受金。
・固定資産は付随費用込みの取得原価。租税公課は費用、消費税は税抜方式(仮払・仮受消費税)。