第3章 決算 やや応用 試験の山場

決算の流れ

1年のしめくくり。期中の記録を正しい金額に直して、財務諸表を作ります。3級の合否を分ける大事なところです。

🎯 このページでわかること

  1. 決算とは何か、そして決算の5つのステップ
  2. なぜ「決算整理」という直しの作業が必要なのか
  3. 売上原価の算定(しーくり くりしー)のしくみ
  4. 貸倒引当金・減価償却・経過勘定などの代表的な決算整理仕訳
  5. 現金過不足・当座借越・貯蔵品・消費税・法人税等の整理
「決算」って聞くとむずかしそう…? だいじょうぶ。やることは 「1年分の帳簿を締めて、もうけと財産をハッキリさせる」 だけ。一つずつ、たとえ話でいきましょう。

1. 決算とは?

決算とは、会計期間(ふつう1年)の区切りで帳簿を締め切り、その1年のもうけ(当期純利益)と、期末の財産の状態を確定して、財務諸表を作る一連の手続きのことです。

会社は1年ごとに「今年はいくらもうかったのか」「いま会社にいくらの財産と借金があるのか」を計算して、外(株主や税務署など)に報告します。その報告書が、貸借対照表(B/S)損益計算書(P/L)です。

たとえるなら…「年末の家計の総まとめ」

1年間こまめに家計簿をつけてきても、年末には「結局いくら貯まった?」「使いかけのモノはいくら残ってる?」を計算しますよね。決算はまさにそれ。日々の記録(仕訳)を、年に一度きちんと精算する作業です。

2. 決算の流れ(5ステップ)

決算は、おおまかに次の順番で進みます。流れを頭に入れておくと、いまどの作業をしているのかが迷子になりません。

手順やることひとこと
決算整理前残高試算表の作成期中の仕訳をいったん集計
決算整理(修正の仕訳)このページの主役。正しい金額へ直す
精算表の作成整理仕訳を1枚にまとめて確認
帳簿の締め切り各勘定を締めて次期へ
財務諸表(B/S・P/L)の作成報告書の完成
このページのねらい

5ステップのうち、②決算整理がいちばんのヤマ場です。ここを集中して学びます。③精算表と⑤財務諸表のくわしい作り方は、次のレッスン「精算表と財務諸表」でじっくりやります。

3. なぜ「決算整理」が必要なの?

期中(1年のあいだ)の記録は、実はそのままだと正しくない部分があります。たとえば…

こうした「ズレ」を期末にまとめて正しい金額へ直すのが決算整理です。ひとことで言えば 「期中のズレを、期末にきちんと直す」 作業です。

▼ それでは、代表的な決算整理を一つずつ見ていこう3級でよく出る論点をぜんぶカバーします

4. 主な決算整理事項

① 売上原価の算定(三分法)

商品を「仕入」「売上」「繰越商品」の3つで処理する方法を三分法といいます。期中は仕入れたら全部「仕入」に入れていますが、期末に売れ残った商品はまだ費用ではないので、来期に繰り越さなければなりません。

そこで決算では、次の有名な合言葉で2本の仕訳を切ります。

合言葉は「しーくり くりしー」

しー(仕入)/くり(繰越商品) … 期首の商品を「仕入」へ振り替える
くり(繰越商品)/しー(仕入) … 期末の商品を「繰越商品」へ振り替える
この2本を切ると、仕入勘定の残高がそのまま売上原価になります。

計算式で表すとこうです。

売上原価の公式

売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期仕入高 − 期末商品棚卸高

具体例で見てみましょう。期首商品 30,000円・当期仕入 200,000円・期末商品 50,000円のケースです。

例:①期首商品30,000円を仕入へ振り替える(しー/くり)
借方貸方
仕入30,000繰越商品30,000
繰越商品(資産)を減らし、仕入(費用)に上乗せ。前期から繰り越してきた商品を、今期の売上原価に含めます。
例:②期末商品50,000円を繰越商品へ振り替える(くり/しー)
借方貸方
繰越商品50,000仕入50,000
売れ残った商品を繰越商品(資産)として来期へ。その分、仕入(費用)から差し引きます。これで仕入残高 = 30,000+200,000−50,000 = 180,000円(売上原価)
向きを間違えやすい!

1本目は「仕入が借方」、2本目は「繰越商品が借方」。しーくり → くりしー の順番(借方科目の順)で覚えると逆になりません。

② 貸倒引当金の設定(差額補充法)

売掛金や受取手形は、相手が倒産すると回収できないことがあります。「来期、これくらいは回収できないかも」とあらかじめ見積もって費用に計上しておくのが貸倒引当金です。

3級では差額補充法が基本。設定額(あるべき残高)から、すでにある貸倒引当金の残高を引いた差額だけを繰り入れます。

差額補充法の式

繰入額 = 設定額 − 貸倒引当金の期末残高

例:期末の売掛金残高 500,000円に対し 2%を設定。貸倒引当金には、すでに 4,000円の残高がある。

設定額 = 500,000 × 2% = 10,000円。すでに 4,000円あるので、足りない 6,000円だけを繰り入れます。

例:貸倒引当金を差額6,000円だけ繰り入れる
借方貸方
貸倒引当金繰入6,000貸倒引当金6,000
貸倒引当金繰入(費用)を計上し、貸倒引当金を増やします。貸倒引当金は売掛金などのマイナスを表す「評価勘定」で、貸借対照表では資産からの控除として示します。
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③ 減価償却(定額法・間接法)

建物・備品・車両などは、使ううちに少しずつ価値が減っていきます。その1年分の価値の減りを費用にするのが減価償却です。3級では計算しやすい定額法を使います。

定額法の式

1年分の減価償却費 = (取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数
3級では残存価額ゼロが基本。その場合は「取得原価 ÷ 耐用年数」だけでOKです。

例:取得原価 600,000円・耐用年数 5年・残存価額ゼロの備品。
減価償却費 = 600,000 ÷ 5 = 120,000円

3級では帳簿の価値を直接減らさず、減価償却累計額という別勘定にためていく間接法で記録します。

例:備品の減価償却120,000円(間接法)
借方貸方
減価償却費120,000減価償却累計額120,000
減価償却費(費用)を計上。備品そのものは減らさず、減価償却累計額(資産のマイナスを表す評価勘定)に積み上げます。B/Sでは「取得原価 − 累計額」が今の帳簿価額です。
期の途中で買った場合は「月割り」

年度の途中で取得した固定資産は、使った月数だけ計上します。たとえば10月に取得して決算が3月なら6か月分。1年分 × 6か月 ÷ 12か月で計算します。

④ 経過勘定(前払・前受・未払・未収)

家賃や利息など、時の経過で発生する費用・収益は、お金の動きと「今年の分か来年の分か」がズレることがあります。これを正しい期間に振り分けるのが経過勘定です。4つの型をセットで覚えましょう。

名前どんなときグループ
前払費用費用を先に払いすぎた(来期分を払った)資産
未払費用費用がまだ未払い(今期分なのに払ってない)負債
前受収益収益を先に受け取りすぎた(来期分を受取)負債
未収収益収益がまだ未収(今期分なのに受け取ってない)資産
覚え方のコツ

「前払・未収」=資産(あとで得をする権利)、「前受・未払」=負債(あとで果たす義務)。払うほう(費用)は前払が資産もらうほう(収益)は未収が資産と整理すると迷いません。

前払費用:支払った家賃のうち来期分20,000円を繰り延べる
借方貸方
前払家賃20,000支払家賃20,000
支払家賃(費用)を減らし、前払家賃(資産)へ。来期の費用を今期から取り除きます。
未払費用:当期分なのに未払いの利息5,000円を計上する
借方貸方
支払利息5,000未払利息5,000
支払利息(費用)を計上し、未払利息(負債)を増やします。今期の費用をきちんと今期に乗せます。
前受収益:受け取った家賃のうち来期分18,000円を繰り延べる
借方貸方
受取家賃18,000前受家賃18,000
受取家賃(収益)を減らし、前受家賃(負債)へ。来期の収益を今期から取り除きます。
未収収益:当期分なのに未収の利息3,000円を計上する
借方貸方
未収利息3,000受取利息3,000
未収利息(資産)を計上し、受取利息(収益)を増やします。今期の収益をきちんと今期に乗せます。

⑤ 現金過不足の整理

期中に「帳簿と実際の現金が合わない」ときは、いったん現金過不足勘定に入れておきます。決算までに原因がわからなければ、雑損(費用)または雑益(収益)に振り替えて締めます。

例:原因不明の現金不足800円を雑損へ
借方貸方
雑損800現金過不足800
現金過不足を消し、雑損(費用)に。逆に現金が多すぎた場合は貸方に「雑益(収益)」を立てます。

⑥ 当座借越の振替

当座預金が貸方残高(マイナス)になっている=銀行から一時的に立て替えてもらっている状態です。決算ではこのマイナス分を当座借越または借入金(負債)へ振り替えます。

例:当座預金の貸方残30,000円を当座借越へ振り替える
借方貸方
当座預金30,000当座借越30,000
マイナスの当座預金(資産)をゼロに戻し、当座借越(負債)として表示。実態どおり「借りている」状態にします。

⑦ 貯蔵品への振替

収入印紙は租税公課、郵便切手は通信費として、買ったときに全額費用にしています。でも期末に使い残しがあれば、それは資産貯蔵品に振り替えます。

例:未使用の収入印紙2,000円・切手1,000円を貯蔵品へ
借方貸方
貯蔵品3,000租税公課2,000
通信費1,000
貯蔵品(資産)に振り替え、租税公課・通信費(費用)を減らします。翌期首には逆仕訳でまた費用に戻します(再振替)。

⑧ 消費税の精算(税抜方式)

税抜方式では、売上にかかる消費税を仮受消費税、仕入や経費で払った消費税を仮払消費税として記録しています。決算でこの2つを相殺し、差額を納める分は未払消費税(負債)にします。

例:仮受40,000円・仮払25,000円を精算する
借方貸方
仮受消費税40,000仮払消費税25,000
未払消費税15,000
仮受消費税(負債)と仮払消費税(資産)を消し、差額15,000円を未払消費税(負債)に。仮払のほうが多ければ「未収還付消費税(資産)」になります。

⑨ 法人税等の計上(さわり)

会社のもうけ(利益)には法人税・住民税・事業税がかかります。決算で当期の税額を計算し、法人税等として計上します。中間納付などで先に払った仮払法人税等があれば、それを充当します。

例:法人税等80,000円を計上(仮払30,000円あり)
借方貸方
法人税等80,000仮払法人税等30,000
未払法人税等50,000
法人税等(費用に準じる)を計上。先に払った仮払法人税等(資産)を消し、残りの50,000円を未払法人税等(負債)として後日納付します。

5. 覚え方のコツ

決算整理は「期中のズレを期末に直す」

すべての論点に共通するのは、正しい期間・正しい金額に直すこと。各論点で 「どの勘定が増えて、どの勘定が減るのか」、そして 「最終的に損益(もうけ)にどう響くのか」 を意識すると、丸暗記でなく理解として身につきます。たとえば前払費用を計上すれば費用が減って利益は増える、減価償却を計上すれば費用が増えて利益は減る——このように一つひとつ確かめてみましょう。

論点は多いけれど、出るパターンは決まっています。仕訳の「型」をリズムで覚えてしまえば、本番ではむしろ得点源。さっそく確認テストでためしてみましょう!

✅ 確認テスト(全7問)

Q1.「しーくり くりしー」の1本目の仕訳は「仕入/繰越商品」で、期首商品を仕入に振り替える。○か×か?

○。1本目は「仕入/繰越商品」で期首商品を仕入へ。2本目が「繰越商品/仕入」で期末商品を繰り越します。

Q2.期首商品20,000円・当期仕入150,000円・期末商品35,000円のとき、売上原価は170,000円である。○か×か?

×。売上原価 = 20,000 + 150,000 − 35,000 = 135,000円。期末商品は引くのを忘れずに。

Q3.差額補充法では、設定額が10,000円・貸倒引当金の期末残高が3,000円のとき、繰入額は7,000円である。○か×か?

○。繰入額 = 設定額10,000 − 残高3,000 = 7,000円。仕訳は「貸倒引当金繰入7,000/貸倒引当金7,000」。

Q4.取得原価500,000円・耐用年数5年・残存価額ゼロの備品の、定額法による1年分の減価償却費は100,000円である。○か×か?

○。500,000 ÷ 5年 = 100,000円。残存価額があるときは「(取得原価−残存価額)÷耐用年数」です。

Q5.「前払費用」は負債のグループに属する。○か×か?

×。前払費用は資産です。「前払・未収=資産」「前受・未払=負債」と覚えましょう。

Q6.未使用の収入印紙や郵便切手は、決算で「貯蔵品」という資産に振り替える。○か×か?

○。買ったときは費用(租税公課・通信費)ですが、使い残しは資産。「貯蔵品/租税公課・通信費」で振り替えます。

Q7.税抜方式で仮受消費税40,000円・仮払消費税25,000円のとき、差額15,000円は「未収還付消費税」として計上する。○か×か?

×。仮受のほうが多いので納める側。差額15,000円は未払消費税(負債)です。仮払のほうが多いときに未収還付消費税(資産)になります。

📝 一問一答(全8問)

決算とは何をする手続き?
A. 会計期間の区切りで帳簿を締め切り、当期純利益と期末の財産状態を確定して、財務諸表(B/S・P/L)を作る一連の手続きです。
決算整理が必要なのはなぜ?
A. 期中の記録には「まだ費用にしていない」「来期分を含んでいる」などのズレがあるため。期末に正しい期間・正しい金額へ直します。
「しーくり くりしー」の2本の仕訳は?
A. ①「仕入/繰越商品」(期首商品を仕入へ)、②「繰越商品/仕入」(期末商品を繰越商品へ)。結果、仕入残高=売上原価になります。
差額補充法の繰入額の求め方は?
A. 設定額 − 貸倒引当金の期末残高。その差額だけを「貸倒引当金繰入/貸倒引当金」で計上します。
定額法(残存価額ゼロ)の減価償却費の式は?
A. 取得原価 ÷ 耐用年数。残存価額があるときは「(取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数」。間接法では「減価償却費/減価償却累計額」と仕訳します。
経過勘定4つのグループ分けは?
A. 前払費用=資産、未収収益=資産、未払費用=負債、前受収益=負債。「前払・未収=資産/前受・未払=負債」で覚えます。
当座預金が貸方残高のとき、決算でどうする?
A. マイナス分を当座借越(または借入金)という負債へ振り替えます。「当座預金/当座借越」。
税抜方式での消費税の精算仕訳は?
A.仮受消費税/(仮払消費税+未払消費税)」。仮受と仮払を相殺し、納める差額を未払消費税(負債)にします。仮払が多ければ未収還付消費税(資産)。

📌 このページのまとめ

  • 決算 = 帳簿を締めて、もうけと財産を確定し、財務諸表を作る手続き。
  • 流れは ①前T/B → ②決算整理 → ③精算表 → ④締め切り → ⑤財務諸表。
  • 売上原価は「しーくり くりしー」。売上原価=期首+当期仕入−期末。
  • 貸倒引当金は差額補充法=設定額−期末残高。減価償却は定額法・間接法。
  • 経過勘定は前払・未収=資産/前受・未払=負債
  • 現金過不足は雑損・雑益へ、当座借越は負債へ、未使用印紙・切手は貯蔵品へ。