🎯 このページでわかること
- 決算とは何か、そして決算の5つのステップ
- なぜ「決算整理」という直しの作業が必要なのか
- 売上原価の算定(しーくり くりしー)のしくみ
- 貸倒引当金・減価償却・経過勘定などの代表的な決算整理仕訳
- 現金過不足・当座借越・貯蔵品・消費税・法人税等の整理
1. 決算とは?
決算とは、会計期間(ふつう1年)の区切りで帳簿を締め切り、その1年のもうけ(当期純利益)と、期末の財産の状態を確定して、財務諸表を作る一連の手続きのことです。
会社は1年ごとに「今年はいくらもうかったのか」「いま会社にいくらの財産と借金があるのか」を計算して、外(株主や税務署など)に報告します。その報告書が、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)です。
1年間こまめに家計簿をつけてきても、年末には「結局いくら貯まった?」「使いかけのモノはいくら残ってる?」を計算しますよね。決算はまさにそれ。日々の記録(仕訳)を、年に一度きちんと精算する作業です。
2. 決算の流れ(5ステップ)
決算は、おおまかに次の順番で進みます。流れを頭に入れておくと、いまどの作業をしているのかが迷子になりません。
| 手順 | やること | ひとこと |
|---|---|---|
| ① | 決算整理前残高試算表の作成 | 期中の仕訳をいったん集計 |
| ② | 決算整理(修正の仕訳) | このページの主役。正しい金額へ直す |
| ③ | 精算表の作成 | 整理仕訳を1枚にまとめて確認 |
| ④ | 帳簿の締め切り | 各勘定を締めて次期へ |
| ⑤ | 財務諸表(B/S・P/L)の作成 | 報告書の完成 |
5ステップのうち、②決算整理がいちばんのヤマ場です。ここを集中して学びます。③精算表と⑤財務諸表のくわしい作り方は、次のレッスン「精算表と財務諸表」でじっくりやります。
3. なぜ「決算整理」が必要なの?
期中(1年のあいだ)の記録は、実はそのままだと正しくない部分があります。たとえば…
- 仕入れた商品のうち、まだ売れずに残っているもの(=まだ費用にしてはいけない)
- 建物や備品の、今年1年分の価値の減り(=まだ費用にしていない)
- 前払いした家賃のうち、来年分(=今年の費用ではない)
こうした「ズレ」を期末にまとめて正しい金額へ直すのが決算整理です。ひとことで言えば 「期中のズレを、期末にきちんと直す」 作業です。
4. 主な決算整理事項
① 売上原価の算定(三分法)
商品を「仕入」「売上」「繰越商品」の3つで処理する方法を三分法といいます。期中は仕入れたら全部「仕入」に入れていますが、期末に売れ残った商品はまだ費用ではないので、来期に繰り越さなければなりません。
そこで決算では、次の有名な合言葉で2本の仕訳を切ります。
しー(仕入)/くり(繰越商品) … 期首の商品を「仕入」へ振り替える
くり(繰越商品)/しー(仕入) … 期末の商品を「繰越商品」へ振り替える
この2本を切ると、仕入勘定の残高がそのまま売上原価になります。
計算式で表すとこうです。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期仕入高 − 期末商品棚卸高
具体例で見てみましょう。期首商品 30,000円・当期仕入 200,000円・期末商品 50,000円のケースです。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 仕入30,000 | 繰越商品30,000 |
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 繰越商品50,000 | 仕入50,000 |
1本目は「仕入が借方」、2本目は「繰越商品が借方」。しーくり → くりしー の順番(借方科目の順)で覚えると逆になりません。
② 貸倒引当金の設定(差額補充法)
売掛金や受取手形は、相手が倒産すると回収できないことがあります。「来期、これくらいは回収できないかも」とあらかじめ見積もって費用に計上しておくのが貸倒引当金です。
3級では差額補充法が基本。設定額(あるべき残高)から、すでにある貸倒引当金の残高を引いた差額だけを繰り入れます。
繰入額 = 設定額 − 貸倒引当金の期末残高
例:期末の売掛金残高 500,000円に対し 2%を設定。貸倒引当金には、すでに 4,000円の残高がある。
設定額 = 500,000 × 2% = 10,000円。すでに 4,000円あるので、足りない 6,000円だけを繰り入れます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒引当金繰入6,000 | 貸倒引当金6,000 |
③ 減価償却(定額法・間接法)
建物・備品・車両などは、使ううちに少しずつ価値が減っていきます。その1年分の価値の減りを費用にするのが減価償却です。3級では計算しやすい定額法を使います。
1年分の減価償却費 = (取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数
3級では残存価額ゼロが基本。その場合は「取得原価 ÷ 耐用年数」だけでOKです。
例:取得原価 600,000円・耐用年数 5年・残存価額ゼロの備品。
減価償却費 = 600,000 ÷ 5 = 120,000円。
3級では帳簿の価値を直接減らさず、減価償却累計額という別勘定にためていく間接法で記録します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 減価償却費120,000 | 減価償却累計額120,000 |
年度の途中で取得した固定資産は、使った月数だけ計上します。たとえば10月に取得して決算が3月なら6か月分。1年分 × 6か月 ÷ 12か月で計算します。
④ 経過勘定(前払・前受・未払・未収)
家賃や利息など、時の経過で発生する費用・収益は、お金の動きと「今年の分か来年の分か」がズレることがあります。これを正しい期間に振り分けるのが経過勘定です。4つの型をセットで覚えましょう。
| 名前 | どんなとき | グループ |
|---|---|---|
| 前払費用 | 費用を先に払いすぎた(来期分を払った) | 資産 |
| 未払費用 | 費用がまだ未払い(今期分なのに払ってない) | 負債 |
| 前受収益 | 収益を先に受け取りすぎた(来期分を受取) | 負債 |
| 未収収益 | 収益がまだ未収(今期分なのに受け取ってない) | 資産 |
「前払・未収」=資産(あとで得をする権利)、「前受・未払」=負債(あとで果たす義務)。払うほう(費用)は前払が資産、もらうほう(収益)は未収が資産と整理すると迷いません。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 前払家賃20,000 | 支払家賃20,000 |
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 支払利息5,000 | 未払利息5,000 |
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 受取家賃18,000 | 前受家賃18,000 |
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 未収利息3,000 | 受取利息3,000 |
⑤ 現金過不足の整理
期中に「帳簿と実際の現金が合わない」ときは、いったん現金過不足勘定に入れておきます。決算までに原因がわからなければ、雑損(費用)または雑益(収益)に振り替えて締めます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 雑損800 | 現金過不足800 |
⑥ 当座借越の振替
当座預金が貸方残高(マイナス)になっている=銀行から一時的に立て替えてもらっている状態です。決算ではこのマイナス分を当座借越または借入金(負債)へ振り替えます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 当座預金30,000 | 当座借越30,000 |
⑦ 貯蔵品への振替
収入印紙は租税公課、郵便切手は通信費として、買ったときに全額費用にしています。でも期末に使い残しがあれば、それは資産。貯蔵品に振り替えます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貯蔵品3,000 | 租税公課2,000 通信費1,000 |
⑧ 消費税の精算(税抜方式)
税抜方式では、売上にかかる消費税を仮受消費税、仕入や経費で払った消費税を仮払消費税として記録しています。決算でこの2つを相殺し、差額を納める分は未払消費税(負債)にします。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 仮受消費税40,000 | 仮払消費税25,000 未払消費税15,000 |
⑨ 法人税等の計上(さわり)
会社のもうけ(利益)には法人税・住民税・事業税がかかります。決算で当期の税額を計算し、法人税等として計上します。中間納付などで先に払った仮払法人税等があれば、それを充当します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 法人税等80,000 | 仮払法人税等30,000 未払法人税等50,000 |
5. 覚え方のコツ
すべての論点に共通するのは、正しい期間・正しい金額に直すこと。各論点で 「どの勘定が増えて、どの勘定が減るのか」、そして 「最終的に損益(もうけ)にどう響くのか」 を意識すると、丸暗記でなく理解として身につきます。たとえば前払費用を計上すれば費用が減って利益は増える、減価償却を計上すれば費用が増えて利益は減る——このように一つひとつ確かめてみましょう。
✅ 確認テスト(全7問)
Q1.「しーくり くりしー」の1本目の仕訳は「仕入/繰越商品」で、期首商品を仕入に振り替える。○か×か?
○。1本目は「仕入/繰越商品」で期首商品を仕入へ。2本目が「繰越商品/仕入」で期末商品を繰り越します。
Q2.期首商品20,000円・当期仕入150,000円・期末商品35,000円のとき、売上原価は170,000円である。○か×か?
×。売上原価 = 20,000 + 150,000 − 35,000 = 135,000円。期末商品は引くのを忘れずに。
Q3.差額補充法では、設定額が10,000円・貸倒引当金の期末残高が3,000円のとき、繰入額は7,000円である。○か×か?
○。繰入額 = 設定額10,000 − 残高3,000 = 7,000円。仕訳は「貸倒引当金繰入7,000/貸倒引当金7,000」。
Q4.取得原価500,000円・耐用年数5年・残存価額ゼロの備品の、定額法による1年分の減価償却費は100,000円である。○か×か?
○。500,000 ÷ 5年 = 100,000円。残存価額があるときは「(取得原価−残存価額)÷耐用年数」です。
Q5.「前払費用」は負債のグループに属する。○か×か?
×。前払費用は資産です。「前払・未収=資産」「前受・未払=負債」と覚えましょう。
Q6.未使用の収入印紙や郵便切手は、決算で「貯蔵品」という資産に振り替える。○か×か?
○。買ったときは費用(租税公課・通信費)ですが、使い残しは資産。「貯蔵品/租税公課・通信費」で振り替えます。
Q7.税抜方式で仮受消費税40,000円・仮払消費税25,000円のとき、差額15,000円は「未収還付消費税」として計上する。○か×か?
×。仮受のほうが多いので納める側。差額15,000円は未払消費税(負債)です。仮払のほうが多いときに未収還付消費税(資産)になります。
📝 一問一答(全8問)
決算とは何をする手続き?
決算整理が必要なのはなぜ?
「しーくり くりしー」の2本の仕訳は?
差額補充法の繰入額の求め方は?
定額法(残存価額ゼロ)の減価償却費の式は?
経過勘定4つのグループ分けは?
当座預金が貸方残高のとき、決算でどうする?
税抜方式での消費税の精算仕訳は?
📌 このページのまとめ
- 決算 = 帳簿を締めて、もうけと財産を確定し、財務諸表を作る手続き。
- 流れは ①前T/B → ②決算整理 → ③精算表 → ④締め切り → ⑤財務諸表。
- 売上原価は「しーくり くりしー」。売上原価=期首+当期仕入−期末。
- 貸倒引当金は差額補充法=設定額−期末残高。減価償却は定額法・間接法。
- 経過勘定は前払・未収=資産/前受・未払=負債。
- 現金過不足は雑損・雑益へ、当座借越は負債へ、未使用印紙・切手は貯蔵品へ。