第1章 仕訳の基礎 最重要 ここが核心

仕訳の基本

借方・貸方ってどっち? 簿記でいちばん大切な「仕訳」を、ここで完全に身につけます。

📖 このページでわかること

  1. 「仕訳」とは何か、なぜ簿記の出発点なのか
  2. 借方(左)・貸方(右)の意味と、つまずかないための覚え方
  3. 簿記の5要素(資産・負債・純資産・収益・費用)とそれぞれの意味
  4. ホームポジション(定位置)で増減の左右が決まるしくみ
  5. 貸借平均の原理と、仕訳をつくる4つの手順
ここが簿記3級でいちばん大切なページです。最初は「借方・貸方ってどっち?」と混乱しますが、ルールはたった5つ。じっくり読めば必ず身につきます。あせらず、いっしょに進みましょう。

1. 仕訳(しわけ)とは?

仕訳とは、お店や会社で起きた1つの取引を、「借方(かりかた・左)」と「貸方(かしかた・右)」の2つに分けて記録することです。簿記のすべての記録は、この仕訳から始まります。

たとえば「商品を現金100円で仕入れた」という取引は、次のように左右に分けて書きます。

例:商品を現金100円で仕入れた
借方(左)貸方(右)
仕 入100 現 金100
費用(仕入)が発生したので借方(左)、資産(現金)が減ったので貸方(右)。1つの取引を、必ず左と右の2面で記録します。

ポイント:仕訳には「勘定科目(かんじょうかもく)」と「金額」を書きます。勘定科目とは「現金」「仕入」「売上」など、取引の中身につける名前のことです。

2. 借方・貸方は「ただの左右の名前」

多くの初学者が最初につまずくのが、この借方・貸方です。でも、いちばん大事なことを先に言います。

借方=左、貸方=右。それだけです。「貸し借り」の意味はいったん忘れてOK。借方・貸方は、左右につけられたただのラベル(名前)にすぎません。

「貸方なのにお金が増える?」のように、言葉の意味で考えると必ず混乱します。意味ではなく、左=借方/右=貸方という位置の名前として、まず丸ごと覚えてしまいましょう。

定番の覚え方:ひらがなの「かり方」は最後の「」がにはらう → 借方は左。「かし方」は最後の「」がにはらう → 貸方は右。手で書いてみると覚えやすいです。

3. 簿記の5要素(5つのグループ)

勘定科目は、必ず次の5つのグループのどれかに分類されます。この5要素が簿記の土台です。

グループ意味代表的な科目
資産持っているプラスの財産。お金や、お金に換えられるもの。現金・普通預金・売掛金・商品・備品・建物
負債あとで返す・支払うべきもの。いわば借金。借入金・買掛金・未払金
純資産資産から負債を引いた正味の元手。会社の元手(自己資本)。資本金・繰越利益剰余金
収益もうけの素(収入の素)。商売で得たもの。売上・受取手数料・受取利息
費用もうけのために使った・出ていったもの。仕入・給料・支払家賃・水道光熱費

覚え方は、資産・負債・純資産=財産のグループ収益・費用=もうけのグループ、と2つに分けて整理すると頭に入ります。

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4. ホームポジション(定位置)=最重要表

ここがこのページの核心です。5つの要素には、それぞれ「定位置(ホームポジション)」があります。定位置とは、そのグループが増える(発生する)ときに書く側のことです。

グループ定位置増加・発生減少
資産借方(左)借方(左)貸方(右)
費用借方(左)借方(左)に発生
負債貸方(右)貸方(右)借方(左)
純資産貸方(右)貸方(右)借方(左)
収益貸方(右)貸方(右)に発生

1本化して覚える:定位置の側で増える、反対側で減る」。これだけで上の表が全部説明できます。定位置が左(借方)の資産・費用は左で増え、定位置が右(貸方)の負債・純資産・収益は右で増えます。

定位置のイメージ:貸借対照表(B/S)は「左に資産/右に負債・純資産」、損益計算書(P/L)は「左に費用/右に収益」。この配置がそのまま定位置になっています。だから、左にあるグループは左で、右にあるグループは右で増えるのです。

5. 貸借平均(たいしゃくへいきん)の原理

仕訳には、絶対に守られるルールがあります。それが貸借平均の原理です。

1つの仕訳は、必ず「借方の合計金額 = 貸方の合計金額」になる。

左右の金額が必ず一致するので、もし借方と貸方の合計が合わなければ、その仕訳はどこかが間違っている、ということになります。これは仕訳が正しいかをチェックする大切な目印になります。

6. 仕訳をつくる4つの手順

取引を仕訳にするときは、次の4ステップで考えると迷いません。

手順考えること
取引で動いたものは何か?(勘定科目を見つける)
それは5グループ(資産・負債・純資産・収益・費用)のどれか?
それは増えた? 減った?(収益・費用は「発生した」)
定位置と照らして左右を決め、金額を書く

7. やってみよう(仕訳の練習)

では、実際の取引を1つずつ仕訳にしてみましょう。各ノートで「どの要素がどう動いたか」を確認してください。

例1:株主から現金1,000を出資され、会社を設立した
借方(左)貸方(右)
現 金1,000 資本金1,000
現金(資産)が増えた→定位置どおり借方。資本金(純資産)が増えた→定位置どおり貸方。
例2:銀行から現金500を借り入れた
借方(左)貸方(右)
現 金500 借入金500
現金(資産)が増えた→借方。借入金(負債)が増えた→定位置どおり貸方。あとで返す義務なので負債です。
例3:商品300を現金で仕入れた
借方(左)貸方(右)
仕 入300 現 金300
仕入(費用)が発生した→定位置どおり借方。現金(資産)が減った→貸方。※三分法では、商品を仕入れたときは「仕入」という費用で記録します。
例4:商品を現金400で売り上げた
借方(左)貸方(右)
現 金400 売 上400
現金(資産)が増えた→借方。売上(収益)が発生した→定位置どおり貸方。※三分法では、商品を売ったときは「売上」という収益で記録します。
例5:備品200を現金で購入した
借方(左)貸方(右)
備 品200 現 金200
備品(資産)が増えた→定位置どおり借方。現金(資産)が減った→貸方。資産どうしの交換です。
例6:家賃50を現金で支払った
借方(左)貸方(右)
支払家賃50 現 金50
支払家賃(費用)が発生した→定位置どおり借方。現金(資産)が減った→貸方。
例7:借入金の一部100を現金で返済した
借方(左)貸方(右)
借入金100 現 金100
借入金(負債)が減った→定位置(貸方)の反対なので借方。現金(資産)が減った→貸方。負債が減るときは借方に書く、がポイントです。

8. よくあるつまずき

① 借方・貸方を「意味」で考えてしまう。「貸方なのにお金が入ってくるのはおかしい」と悩むのは典型的な失敗です。借方・貸方は左右の名前。意味ではなく、グループの定位置で左右を決めましょう。

② 三分法の「仕入・売上」を勘違いする。「仕入」は商品という資産では?と思いがちですが、三分法では仕入=費用売上=収益として記録します。これは3級の頻出ポイントなので、しっかり押さえましょう。

③ 増減の判断を飛ばす。科目だけ見て左右を決めると間違えます。必ず「増えた? 減った(発生)?」を考えてから、定位置と照らして左右を決めてください。

演習確認テスト(○×)

Q1. 借方は「右」、貸方は「左」を指す。

答え:× 逆です。借方=左、貸方=右です。「かり方の『り』は左にはらう」で覚えましょう。

Q2. 資産が増えたときは、借方(左)に記入する。

答え:○ 資産の定位置は借方なので、増えたら借方(左)に書きます。

Q3. 負債が増えたときは、借方(左)に記入する。

答え:× 負債の定位置は貸方です。負債が増えたら貸方(右)に書きます。借方に書くのは負債が減ったときです。

Q4. 収益(売上など)が発生したときは、貸方(右)に記入する。

答え:○ 収益の定位置は貸方なので、発生したら貸方(右)に書きます。

Q5. 1つの仕訳では、借方の合計金額と貸方の合計金額は必ず一致する。

答え:○ これが貸借平均の原理です。左右の合計が合わなければ、その仕訳は間違っています。

Q6. 三分法では、商品を仕入れたときの「仕入」は資産として記録する。

答え:× 三分法では「仕入」は費用として記録します。同じく「売上」は収益です。
暗記一問一答
Q. 仕訳とは何ですか?

1つの取引を、借方(左)と貸方(右)の2つに分けて、勘定科目と金額で記録することです。簿記のすべての記録の出発点です。

Q. 借方・貸方はそれぞれ左右どちらですか?

借方=左、貸方=右です。意味ではなく、左右につけられた名前(ラベル)と考えます。

Q. 簿記の5要素(5グループ)を答えてください。

資産・負債・純資産・収益・費用の5つです。

Q. 資産・費用の定位置(増えるときに書く側)はどちらですか?

借方(左)です。資産は増えたら借方、費用は発生したら借方に書きます。

Q. 負債・純資産・収益の定位置はどちらですか?

貸方(右)です。これらが増える・発生するときは貸方に書きます。

Q. 貸借平均の原理とは何ですか?

1つの仕訳では、借方の合計金額と貸方の合計金額が必ず一致するという原理です。

Q. 三分法では「仕入」と「売上」はどのグループですか?

「仕入」は費用、「売上」は収益です。商品(資産)ではない点に注意します。

📌 このページのまとめ

  • 仕訳=1つの取引を借方(左)と貸方(右)に分けて記録すること。簿記の出発点。
  • 借方=左、貸方=右。意味で悩まず、左右の名前として覚える。
  • 簿記の5要素は、資産・負債・純資産・収益・費用。
  • 定位置は、資産・費用=借方(左)、負債・純資産・収益=貸方(右)。定位置の側で増え、反対側で減る。
  • 貸借平均の原理:借方合計=貸方合計は必ず一致する。
  • 三分法では「仕入」は費用、「売上」は収益。